プリントを配る子が素直に行動できるようになるには?

「プリント配ってくれる人?」

と聞いて、初めは座っているけど、じっとしていられなくて配りに来てくれる子がいる。

そんな子たちの心理状況を言語化できるかやってみる。

 

①「いい子」という表現が当てはまるか

 いい子なんだと思う。だけど、すぐに配りに来てくれる訳でもない。そういう子も確かにいる。自分が動くことが苦にならない、人のために素直にすぐに動けるいわゆるいい子だ。でも、そうではないのだから純粋にただいい子と言ってしまうのはなんか違う。

 なぜ来ることができるのか、なぜじっとしていられないのか、この2点をそれぞれ考えてみる。

 

②なぜ来ることができるのか

 多分人のために働くことはそんなに嫌じゃないんだと思う。でも、「いい子的な行動」を素直にしていいかどうか迷ってるんじゃないかな。いい子的な素質はある。でも、それを素直に出していい環境じゃない。安心していい子を出せない。じゃあ、いい子を出したらどうなると考えているんだろう。

 

③いい子を出したら、このクラスでどうなる?

 「いい子ぶってる」「先生に気に入られようとしてる」

 そんなふうに思われるんだったら、安心していい子を出せない。

 じゃあ逆に、いい子を出していいクラスはどんな環境?

 

④いい子を出していいクラスは?

 「ああ、正しい行動をしてくれているな」「先生にどう思われるとかじゃなく、自分でいいと思ってやってくれてるんだな」

 そんな感じかな。だったら、どうしたらそう思い合えるようなクラスになるのか。

 

⑤正しい行動が素直に認められるクラスは?

 正しい行動を正しく評価し合えること。それができるのは、そういう行動を「言葉」で価値づけているから。そうすることでその行動の「正しさを認める」という心理が一般化する。じゃあ、言葉で価値づける方法は?

 

⑥言葉で価値づける方法は?

 最初の例に戻ってみよう。「プリントを配ってくれる人?」と聞いて、配ってくれた子。その行動はみんなのために自分から働くことができるという正しい行動と言える。じゃあそれをどうやって言葉で価値づけて一般化するのか。

 プリントを配り終わった後に「今ね、〇〇さんたちは自分からプリントを配ってくれましたね。人のために素直に働けるってとても素晴らしいことですよね。」そんなふうに伝えたとする。まだ、素直に人の行動の正しさを受け入れられないという前提の話なわけだから、聞いているプリントを配っていない子たちにとっては「なんだよ。どうせ俺たちは配ってないよ。」としかならない。配ってくれた子にしても「みんなからどう思われるかな。」「先生やめてよ。配らなきゃよかった。」となりかねない。

 これが、しっかり振りかぶった右ストレートだとするなら、小刻みな左ジャブを打ってみる。

 プリントを受け取ってくれた時に「ありがとう。みんな助かるよ。」「〇〇さん、いつも進んで動いてくれてるね。」「自分から配ろうとするのって難しいよね。ありがとう。」こんな感じかな。その子にとっても、他の子にとっても、左ジャブでしかない。このくらいなら、こっちもあっちも大きいことにはならない。けど、確実に少しは効いているってことになる。

 じゃあ、もうちょっと強い、真柴さんのフリッカージャブならどうか。

 配ってくれている時に「この行動が広がるといいな。」これは、ちょっとストレートっぽい。やりたくなくなる。じゃあ、もうちょっと抑えて「う・れ・し・い。配る人が増えてきて(人が増えることの良さを価値づける)、帰りの会が早くできるね(みんなが助かることへの価値づけ)。助かるぅ。」このくらいならフリッカージャブってことでいいかな。

 じゃあ、右ストレートはダメなのか。打っていいのはどんな時か。

 

⑦右ストレートを打っていいのは?

 誰も気まずい思いをしない時。「〇〇君って、いつも元気に挨拶してくれるじゃん。失礼だけど、先生もそれに慣れちゃって、そういうことができる人なんだなって当たり前みたいに思ってたんだよ。でもね、みんなわかると思うけど、先生ICT担当ってやつで最近全校みんなの分のパソコンのこととかやってて本当に疲れてたんだ。体力的にきつい。でも、先生が元気ないのはやっぱみんなに悪いって思うから、元気出そうとする。でも、正直きつい。そんな時に、〇〇君がいつもみたいに元気に「おはようございます」って言ってくれたんだ。元気になったわ。一気に。挨拶の力ってすごいよね。挨拶って礼儀みたいなもんだと思うけど、元気がない人を元気にする力まであるって、その時初めて気づいたよ。そして、そんな挨拶を当たり前にできる〇〇君って本当にすごい。拍手!」ぱちぱちぱち。1「先生の大変さがわかってる」2「〇〇君の挨拶はいい」3「挨拶とはいいものである」4「自分たちもそれなりに挨拶はやっている」4があるから、自分たちが悪いわけではない。2があるから、特にいい子してるわけじゃない。1があるから、人助けにもなっている。で、3が強調される状況。

 これを一般化するとどうなるか。

 

⑧右ストレートを打てるようになるには?

 1みんながやっているが、その子が特に頑張っている状況である。

 2大変な人を助けている状況である。

 この2つがあればまあ大丈夫と言えそう。ただし、言っていい環境もある。例えば、空気が重い時。注意された、とか、授業が楽しくないとか。まあ、普通の状況だったら大丈夫なんじゃないかな。

 ということで、プリントを配る子が素直に行動できるようになるためには、

1左ジャブを小まめに打っとく。

2状況に気をつけて右ストレートを打つ。

 この2つで行ってみるといい。

 それではまた。